やなしたさんが二人いる
福島磐城の出、在笹塚の橋本太郎は、暗闇に居れば目玉ばかりがギラギラと光るあやしい風体で、素性を知っている馴染みの仲でも、思わず避けてしまいそうな体、食い詰めた素浪人さながらだ。
しかし、鋭い眼光とは裏腹に、心情は寛厚にして旧知とは款洽、付き合えばこれほど気安い男も珍しい。
フリーペーパー「ナイスガイ」編集長、ファッションブランド「サタデー・モーニング」主幹、彼の活動は広くて深い。妄想をここまで粘り強く現実に持ち込む男も随分だ。皆が呆れていても、それすら笑い飛ばす強さが彼にはある。大したもんだと、ここは感心する。
彼が敬愛する漫画家、藤子・F・不二雄氏の作法に則り、本作は「すこしふしぎ」を基調としている。橋本太郎は、過去にデザインの経験も多少あり、構図の取り方はうまく、コマ運びも堅調。ウェブで読みやすく横長のコマ割りをしてくるあたりはさすがだし、何も言わなくても16ページで構成してくるのも、中々仕事をわかっている。印刷にもコーディングにも耐えうる、現代的なデザインスキルを持っている。
このような男が、相変わらず無職であるという時勢を、重ねて悔やみ、尚、余りある。
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